10月2日に僧侶であり理学療法士でもある鈴木秀彰さんを外部講師としてお招きし、「仏教と医療」というテーマで講演をいただきました。また後半では、鈴木さんにファシリテータとして参加していただき、臨床場面で方針決定に葛藤が生じた事例を用いて、小グループで議論しました。
前半では、仏教とは「慈悲のこころ」であり、これは医療と同根であること。医療を提供することは仏教を実践することである、という説明がありました。また、仏教的なリーダーシップ論についての説明がありました。仏教にもリーダーシップにも「これ」という解答はないが、「慈悲」と「謙虚」をベースにしたリーダーシップの在り方は、医療だけでなくビジネス界でも、価値の多様化した現社会でも通用する汎用性の高い姿勢ではないだろうか、というテーゼが出され、共感しました。
後半は、医療倫理の原則を仏教的に捉えた説明を受けたのち、臨床的葛藤があるケースを2つの問いに沿ってスモールグループで議論しました。これまで現場で実践してきた倫理カンファレンスは直接患者ケアに関わる職種が参加して行うものでしたが、事務や技師が入ってのカンファレンスはより中立的な立場での意見がでやすいという気づきを得ました。またカンファレンスのファシリテータの役割が重要で、職種による医療観や職種間パワーバランスを排除した進行に徹することが期待されるのを実感しました。
研修終了後の懇親会では、6年前に「あたたかな医療」で有名な諏訪中央病院を見学し、鎌田實名誉院長の診察場面でご一緒したときのことを回想しつつ、交流を深めました。鈴木さんから、『「あたたかな医療」を貴院からも感じましたよ』と言っていただけたことがとても嬉しかったです。今後も「慈悲」を基盤にしたあたたかくおもいやりのある医療を展開できるよう、スタッフとともに互いにリーダーシップを発揮していきたい、改めてそう感じた1日でした。
院長 玉木 千里